こういった間違いはサッカー以外のスポーツでも起きている。昨年2月、フェドカップ(テニスの国際試合)ではドイツ国歌のタブーに触れた。同国の国歌『ドイツの歌』は元々歌詞が3番まであるが、国歌として認められているのは3番のみ。1番、2番が歌われることはない。特に1番は「ドイツ、ドイツ、全ての物の上にあれ この世の全ての物の上にあれ」と覇権主義と取られかねない内容で、実際ナチスドイツ時代には積極的に歌われていたため公の場で歌うことはタブーとされている。そんなタブーを知らないアメリカ人男性歌手が1番を試合前に熱唱してしまったのだ。ドイツ人選手や観客はすぐに気付き、歌手に負けじと3番を彼の歌声に被せて熱唱した。

 更にひどいのが、2012年にクウェートで行われた射撃選手権大会での表彰式。優勝したカザフスタン女性選手を讃えるため流れたのはカザフスタン国歌ではなく、卑猥な言葉を含むパロディーのカザフスタン国歌だった。この歌は同国を笑いのネタにしたアメリカのコメディー映画『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』の作中で使われたもので歌詞にはこんな言葉も。

「カザフスタンの売春婦は地域でもっとも清潔 トルクメニスタンを除いて」

 本当に国際大会で流されてしまったのかと疑いたくなるほどひどい内容だった。歌詞が英語だったため表彰台に立っていた女性選手が内容を理解していたかは定かでないが、自国の国歌とは違うと分かっていながら表情を変えず右手を胸に当てながら歌を聞いている姿は切ない。担当者がインターネットからダウンロードした曲を確認せずに流してしまったのが原因だった。この出来事にカザフスタンから猛抗議があり、後日改めて表彰式が行われた。

 表彰式は選手たちが試合に向け日々努力した成果をかみしめることができる大事な場。そこで、このような間違いが起こってしまうのはとても悲しいことだ。2020年には東京でオリンピックが開催されるが、このような間違いが起こらないことを願う。

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