要するに、走りを一度ストップすることで、下がってゴール前を固めようとする最終ラインとの距離を意図的に離し、自ら“2列目”と化してペナルティエリア内に飛び込むのだ。カウンターのため守備的MFも戻りきれず、マネがフリーになってシュートを放つシーンは複数回あった。

 DFラインの背後に抜けるスピードはプレミアリーグでもトップクラスにあり、それでいて賢さも兼ね備える。リバプールのユルゲン・クロップ監督の指導で、パスやワンツーで周囲を活かす技術も伸びた。「前を向かせない」ようにしても、前を向くための駆け引きの巧さも持ち合わせているということだ。

 さらに頭を悩ますのは、セネガルでマネが主戦場とする右サイドを固めればいいわけでもないこと。CFのディアフラ・サコや、左MFのディアオ・バルデ・ケイタと流動的にポジションを代えながら、マネはCF、左サイド、トップ下と自在に動く。対面する左WBの長友佑都と左CBの槙野智章の二人だけではなく、セントラルMFを含めた守備ブロック全体で動きを注視する必要がある。

 マネは、南セネガルのセディウという小さな街で生まれた。今となっては意外だが、同国の有名なトレセンに加わる15歳まで、両親にはプロサッカー選手になることを反対されていたという。「しっかりとした教育を受け、立派な社会人になって欲しかったみたい」。マネは青年期をそう述懐する。

 そのせいだろう。向上心がひときわ強い。サウサンプトンで隣にいた吉田も「すごく真面目で野心的で向上心がある。もちろん技術やスピードもそうですけど、メンタリティーが非常にいい選手だと思う。素晴らしい選手ですね」と絶賛する。

 たしかに、サウサンプトン在籍時代には、試合で活躍した翌日もジム室で筋トレを行うマネの姿があった。通常、試合に出場した選手はリカバリー用の軽い練習で済ませることが多いが、こうした飽くなき向上心があるからこそ、今のような活躍ができているのだろう。

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