サッカー日本代表の吉田麻也 (c)朝日新聞社
サッカー日本代表の吉田麻也 (c)朝日新聞社

 2002年の日韓W杯。セネガルが前大会王者のフランスを1-0で下した開幕戦を、当時10歳のサディオ・マネは、テレビで食い入るように見つめていた。あれから16年が経過したが、26歳になった今も、ベスト8に進出してセネガル中が沸いた当時の記憶は鮮明に残っているという。

 02年W杯でセネガルのエースを務めたFWエル・ハッジ・ディウフについて聞かれると、「僕のアイドルだった。国中から尊敬を集めていたし、彼のようになりたかった」。そのマネが、セネガル代表の背番号10を背負いロシアW杯に挑む。

 最大の持ち味は、何といっても敵を置き去りにする驚異的なスピードだ。所属先のリバプールでも、ロングカウンター時にグングン加速して長い距離を突っ走り、ショートカウンターでは俊敏性を生かしてDFラインの背後を突く。オフ・ザ・ボールの動きにも優れ、相手CBとSBの間にできる「ニアゾーン」に侵入しラストパスを呼び込む。それでいて、密集地帯では卓越したテクニックを駆使してボールを失うこともない。ゴール嗅覚も、決定力も高い。単なるウィンガーの枠に収まらない幅の広いプレーができるのが特徴で、ファイナルサードで大きな違いを生み出す。

 では、グループリーグ第2戦でセネガルと対峙する日本代表は、そんなマネをどのように抑えればいいのか。サウサプトンで2014年から2シーズンにわたり、マネとチームメートだった吉田麻也によれば、「前を向かせてプレーさせないこと」がポイントになるという。

「(マンチェスター・Cの)レロイ・サネやラヒーム・スターリングもそうですけど、スペースを与えて前を向かせるのが一番(自分たちが)苦しくなる。なので、(陣形全体を)コンパクトにしてやるのが一番いいと思います。(記者:マネの特徴を知っている。やりやすさは?)やりやすいことはないですけど、自分が持っている情報はみんなとシェアする。特徴はもちろん伝えていく。逆に言えば、相手も僕の苦手なところを分かっていると思うので、どっちもどっちじゃないですか」

 一筋縄にいかないのは、マネはフリーになる技術にも秀でていること。例えば、カウンター時に味方がサイドでボールを持てば、マネは猛スピードで最前線へ突っ走る。ところが、相手の最終ラインが全速力で戻るのを見ると、マネはダッシュを突然ストップ。相手の最終ラインとの距離が開いたのを確認すると、再びダッシュを始めてゴール前に侵入した。

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クレバーな駆け引きも得意なマネ