クロマティは2日前の中日戦(平和台)でも江本晃一に頭部をかすめる危険球を投げられたばかりとあって、これまで溜まりに溜まっていた怒りが一気に爆発したようだ。

 これを見た両軍ナインが一斉にベンチを飛び出し、「やりやがったな、バカヤロー!」「うるせえ!わざとぶつけやがって!」などと罵り合いながら、大乱闘が始まった。

 中日・星野仙一監督が右手で巨人・王貞治監督の左肩を小突くと、王監督も大きな目をひんむいて「やめろ、星野!我々がこんなところで主役になっちゃあ、いかんのだ!」と叫ぶ。スタンドからも興奮したファンが乱入し、警察官、警備員約50人が制止する大騒動となった。

 事件を起こしたクロマティは、セ・リーグ連盟から7日間の出場停止と制裁金30万円の処分を受けた。前年10月2日のヤクルト戦(神宮)では、頭部死球を受けたにもかかわらず病院を抜け出してベンチ入り。“涙の代打満塁ホームラン”を放ち、美談の主人公になったが、同じ死球が原因で一転イメージダウンとは、なんとも皮肉な結果だった。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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