カメラを持って街に出ると、さまざまなシャッターチャンスにあふれている。しかし、レンズの先にある被写体や街の風景は、撮影しても法的に問題ないのだろうか? 「撮影禁止」という表示は守らなくてはいけないのだろうか? 発売中のアサヒカメラ特別編集ASAHI ORIGINAL『写真好きのための法律&マナー』から、改めて街中で写真を撮ることについて、みずほ中央法律事務所代表弁護士の三平聡史さんが具体的なケースを基に解説する。
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【ケース1 商業施設での撮影ルールは施設管理者が決定するのでその方針に従うのが基本】
専門店が集まるショッピングモールやデパート、まるで一つの街のような巨大なものなど、全国各地にはさまざまな商業施設が存在している。
「こうした施設では撮影に関する注意書きを掲げていることが多いので、それに従うことになります」(三平弁護士、以下同)
撮影禁止を掲げる施設は少なくなく、その理由も「撮影行為が他の客の迷惑になる」「他の客のプライバシーへの配慮」「ブランドのロゴが写ってしまう」とさまざまだ。
大型施設の中には、公道につながるデッキ部分や、公開空地などもあるが、こうした空間はどうなのだろうか?
「屋外部分は商業施設に用がない人も通り道として利用することがあります。登記上は私有地かもしれませんが、誰もが通れる場所は公道に近い位置づけですから、その場所に『撮影禁止』と明記されていなければ問題ないでしょう」
一方で、撮影禁止でも注意されることなく撮影する人を見たことはないだろうか?
「単に施設管理者が気づいていない場合もありますが、禁止の度合いには幅があるものです。たとえば、スマートフォンで自分の子どもを1枚撮るくらいであれば、禁止の対象外と言えるでしょう」
ここで勘違いしてはならないのは、決して「注意されなければ大丈夫」ということではないということ。常識の範囲内で許容されているにすぎず、他人の顔がわかるようなアップの写真を撮ったり、何枚も写真を撮ったりすれば、管理者の許容範囲は超えてしまう。