撮影者はカフェの店内ではなく、公道から撮影している。「公道からであれば、特に問題ないのでは?」と考えられなくもないが、この場合はどうなのだろうか?

「確かにテラス席は屋外にあり、公道のように人の目にさらされる場所と言えなくもありません。この席に座っている人を無断で撮影した場合、まずは被写体の肖像権の問題があります。もし顔がはっきりとわかるようにアップで撮影すれば、その人の肖像権侵害にあたる可能性があります。また、店側としては、外からカメラを向ける人に対して『お客様が不快に思ったり、嫌がったりするので撮影しないでほしい』『他のお客様の迷惑となる』と主張することができます。撮影行為がある種の営業妨害になると考えられるからです」

 カフェテリアの客をどう撮影するかでも、法的な問題点は変わっていく。客の顔や姿をアップで切り取った場合、肖像権侵害の恐れがあるのは前述のとおり。一方、客に寄りすぎると、どこの店なのか特定できないため、店側は施設管理権を主張しづらくなる。

 次に、客の顔のアップからは少し引き、テラス席でくつろぐ様子を客に断りなく撮影したとする。写真には客の表情はもちろん、テーブルや店先の様子も写り込んでいる。この場合はどうなのか。

「やはり被写体となった人の肖像権侵害と、カメラを向けられることによって『客が嫌な思いをするかもしれない』と考える店の営業権の侵害が考えられますね」

 では、もっと引いて撮った場合はどうだろうか。街中で数店の店が立ち並び、そのうちの一店がカフェ。店の軒先でお茶を楽しむ人の姿が写り込んでいるといった写真だ。

「そこまで引いてしまうと、これは公道でのスナップ撮影と同じになります。カフェテラス席の人も、お店もあくまで風景の一部となりますので、法的には問題ありません」

◯三平聡史(みひら・さとし)
みずほ中央法律事務所代表弁護士。同事務所のホームページでも撮影と法律に関するコラムを執筆している。

(文・吉川明子)

アサヒカメラ特別編集『写真好きのための法律&マナー』から抜粋

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