
今シーズンのメジャーリーグには5人の新人監督がいる。その中の1人が、現在ア・リーグ東地区の首位争いを演じているヤンキースのアーロン・ブーン監督(45)である。
ブーン監督は、現役時代は主に三塁手としてメジャー6球団で12年にわたってプレー。タイトルとは無縁だったが、2002年にはいずれも自己最多の26本塁打、32盗塁をマークするなど、通算1152試合の出場で打率.263、126本塁打、555打点、107盗塁の成績を残した。
そのキャリアで最も印象に残るのが、この通算成績には含まれないポストシーズンでの一発だ。ヤンキースに在籍していた2003年のア・リーグ優勝決定シリーズ第7戦。メジャー1年目の松井秀喜が同点のホームインの際に、スライディングから大きく跳び上がって全身で喜びを表したことで有名なこの試合で、ブーン監督は延長11回裏にチームのワールドシリーズ進出を決めるサヨナラ本塁打を放っている。
だが、ブーン監督の名を広く知らしめたのは何よりもその家系だ。祖父は、1955年にタイガースの正三塁手として打点王を獲得したレイ・ブーンで、父はゴールドグラブ賞7回の名捕手だったボブ・ブーン。さらに4歳上の兄ブレット・ブーンも、01年にはイチローが入団したばかりのマリナーズで打点王に輝いているという、3世代にわたるメジャーリーガー一家なのだ。
筆者はこのブーン一家の4人が勢ぞろいするのを、目撃したことがある。場所は03年のオールスターゲームの舞台となったシカゴのUSセルラー(現ギャランティード・レート)・フィールド 。この年は初めてブレットとアーロンがそろってオールスターに選ばれ、そこに祖父のレイと、当時はレッズの監督だった父のボブが激励に訪れたというわけだ。
アーロンはこのオールスターの時点ではレッズに在籍していて、父の下でプレーしていたのだが、球宴の約2週間後に父が解任されると、直後に自身もヤンキースへトレードされることになる。アーロンがオールスターに出場したのはこの年だけで、翌年には祖父のレイが他界してしまうので、この時の4ショットは実に貴重なものとなった。