「試合に出るためにいろんなことに準備してきたつもりですし、一番はチームが勝つためにやりたいので、すべてに責任というか覚悟を持ってやっていきたいなと思ってます」

 キャンプからひたむきに守備練習に取り組み、開幕戦でプロ16年目にして初めて一塁手として出場。首脳陣にとって、坂口の一塁起用はあくまでもオプションの1つだったはずだが、正一塁手が予定されていた15年の打点王、畠山和洋の離脱もあって、一塁が坂口の新たな主戦場となった。

 不慣れなポジションが打撃に影響を与えても不思議ではないが、「バッティングと守備は一緒に考えたことがない。バッティングを守備に引きずるとか、守備をバッティングに引きずるような選手は、僕はいないと思います」と、一笑に付す。

 打順も開幕時の6番に始まり、青木が死球の影響で欠場した5月6日の広島戦では代わりに3番を打つなど、ここまで4番と8、9番を除くすべての打順を経験しているが「打順は一切気にしたことがない」と意に介さない。現在は5番に落ち着いているが、たとえ何番を打とうと「自分にできることをしっかりやろうと思っています」と、試合に臨むスタンスはまったく変わらない。まさにザ・プロフェッショナルである。

 先述のとおり、坂口は今年でプロ16年目。過去には1981年に阪神の藤田平が16年目にして初の首位打者に輝いた例があり、かなり気が早いが坂口にもこれに並ぶ“偉業”を期待したくなる。その前に、始まったばかりのファン投票でオールスターに選ばれ、7月13日の第1戦でかつてのホームグラウンドである京セラドーム大阪に“凱旋”するのを、楽しみにしたい。(文・菊田康彦)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。