九条の二 (1)前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。

 これだと、自衛隊の保持が「憲法上の義務」となる。つまり、自衛隊を持たなければ憲法違反になってしまうのだ。「自衛のための軍隊なら持っても合憲、持たなくても合憲」という現状の憲法とは、意味がまったく変わってくるのである。

 しかも、自民党の改正草案には、「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として」という修飾語がついている。このことから、その目的を達成するのにふさわしい自衛隊を持つ必要があるということになる。しかも、それが憲法上の要請となるのだ。

 例えば、中国が軍拡を進めれば、今の装備のままでは日本の国を守るに十分ではない。それでは、憲法の要請にこたえられず、憲法違反となる。したがって、中国に負けないように軍備を増強しなければならない。

 という理屈が成立することになるのだ。

「国を守るために必要な軍備」というものを考えた時、当然、一定規模の自衛隊員の維持が責務となる。しかし、現在でさえ、自衛隊の高齢化は深刻な問題で、今後、若手隊員不足が深刻化するのは必至だ。若年労働者の不足により、今、日本中の労働市場で若者の争奪戦が起きている。給料もどんどん上がるだろう。そんな中で自衛隊員を新たにリクルートするのは至難の業だ。

 そうなると、徴兵制を採るしか道はないということになる。それが憲法上の義務だという考えになるのだ。石破茂元防衛相は、徴兵制導入の議論に関連して、自衛隊員になることは、憲法18条が禁止する「苦役」に当たるのかという疑問を投げかけたことがある。国を守る仕事は、聖なるお仕事ということだろう。今は徴兵制は憲法違反だというのが政府見解だが、集団的自衛権と同じく、ある日突然その解釈を変えて、9条の2の要請にこたえるためには認められるということになる可能性が十分にある。

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