■安倍総理の憲法9条改正で何が起きるのか
私が、今回のコラムで、憲法改正と財政健全化計画を一緒に取り上げたのにはもちろん理由がある。それは、この二つの問題を結びつけて考えると、今、日本という国の「国の形」を大きく変えようとしている安倍総理の目論見が鮮明に浮かび上がってくると考えるからだ。
冒頭に紹介した通り、憲法記念日のメッセージで、安倍総理が憲法9条改正に執念を燃やしていることがあらためて明らかとなった。
安倍総理の決まり文句は、「命がけで日本を守ってくれる自衛隊が違憲だというような憲法学者が多い。これでは、自衛隊員に申し訳ない。違憲の疑いをなくすために、9条の2を新設して、自衛隊保持を憲法に明記するべきだ。9条の1項、2項には手を付けないので、平和主義は不変で、自衛隊の役割にも何も変化はない。自衛隊があるからそれを保持すると書くだけのことだ」というものである。一見、なるほどと思ってしまう人もいるかもしれない。何も大きな変化はないのだとしたら、「国の形が変わる」などと騒ぎ立てるのは、おかしいということになる。
安倍総理の論理には、様々な反論があるが、私が最も懸念しているのは、今自民党が考えている9条の2が創設されると、国防以外の様々な政策のプライオリティが下がり、国民生活よりも防衛費が優先されることになるという点だ。そして、もう一つの懸念は、徴兵制や核武装に道を開くことである。
これらの点は、5年ほど前から私が指摘してきたことだが、あらためてそれを紹介しておこう。
現在、政府の解釈では、「自衛隊保持は合憲」とされている。ここで、注意すべきなのは、「合憲」という意味は自衛隊があっても悪くはないという意味に過ぎない。決して、「自衛隊がなければいけない」ということではない。「自衛隊を持たなくても合憲である」という意味を含んでいる。
そんなことは当たり前だと誰もが思うだろうが、意外とこの点が見過ごされている。
自民党が現在検討している9条改正案は、「第九条の二」という条項を新たに設けるものだ。その「第九条の二」第1項には、こう書かれている。