5月3日、安倍晋三総理は、憲法改正を求める民間団体の集会へのビデオメッセージの中で、「この1年間で憲法改正の議論は大いに活性化し、具体化した」と述べた。
モリカケ疑惑、自衛隊日報問題などの相次ぐスキャンダルにまみれて、憲法改正どころではないという声が与党内でも囁かれる中で、安倍総理の頭は、悲願の憲法改正に向かって、物事は着々と進展しているという幻想に支配されているようだ。
一方、憲法記念日前日の5月2日、日本経済新聞は1面トップに、「財政黒字化25年度に 5年先送り 規律維持 綱渡り」という 見出しを掲げた。連休明けからは、その他の全国紙も連日のように財政健全化計画についての報道を大きく展開している。
これらの報道によれば、政府は2019年度以降の新たな財政健全化計画を検討しているが、国と地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化する目標時期を25年度としようとしている。報道のとおりだとすれば、これまでより5年先送りだ。
基礎的財政収支とは、一言で言うと、借金のことは忘れて、毎年の税収などの国の収入から、毎年必要な政策的な経費(社会保障費、公共事業費、防衛費など)を引き算した差額のことだ。プライマリーバランス(PB)ともいう。これが黒字なら新たな借金はせずにすむが、赤字だと新たな借金をしなければならないことになる。
日本の財政は火の車で、PBが黒字になったことはない。つまり、毎年PBが赤字で、その分の借金を積み重ねてきた。その結果、02年度に約601兆円だった公債等残高は17年度には約1042兆円に膨らんだ。
政府はこれまでもPBを黒字化すると言い続けてきたが、その時期を繰り返し先延ばししてきた。06年には「11年度の黒字化」目標を掲げて失敗。09年に「今後10年以内の黒字化」へ先送り。10年には「20年度の黒字化」と微修正したが、これも失敗は確実となった。
そこで、今回は、「25年度黒字化」と5年も先送りする方針を定めようというのだが、それでもその達成は容易なことではない。そのため、現在の議論でも、既に様々な前提条件をかなり甘く設定するという本末転倒の話になってきている。つまり、5年先送りでも、現実には達成困難というのが実情である。