森友・加計問題や財務省の福田淳一事務次官によるセクハラ疑惑で国会が空転している。今国会では、裁量労働制拡大の審議で紹介されたデータが不適切だったことも発覚し、安倍晋三首相や加藤勝信厚生労働相が陳謝したこともあった。次から次へと問題が発覚し、永田町と霞が関は大混乱だ。
【写真】「データ捏造」の指摘を受け、文言が修正された林野庁の資料はこちら
だが、そんな中で新たに「データが捏造されている」と指摘されている「森林経営管理法」が、あっさり衆院を通過してしまったことはあまり知られていない。
森林経営管理法は、2024年度から導入される予定の「森林環境税」に関連する法案だ。手入れが行き届かず、森林所有者が管理していない森林を、市町村が中心となって担い手となる林業事業者に集約して林業をすることが目的に掲げられている。法案が成立すれば、森林管理や林業経営に行政が強力に介入できるようになることから「戦後林政の大転換」といわれている。
データ“捏造”は、林野庁がこの法案を説明するために作成した資料「林業の現状」で発覚した。資料には、法案提出の背景として「8割の森林所有者は森林の経営意欲が低い」と書かれていたが、データの引用元となっているアンケート「森林資源の循環利用に関する意識・意向調査」では、「経営への意欲」を聞いた質問は存在していなかったのだ。データの問題を衆院農林水産委員会で追及した田村貴昭衆院議員(共産党)は、こう話す。
「林野庁の担当者に質問すると、アンケートの回答である『林業経営規模の意向』をまとめた結果に『現状を維持したい』と答えた71.5%と『経営規模を縮小したい』と答えた7.3%を合算して『8割が経営意欲がない』と決めつけていたことがわかった。経営規模を拡大するかどうかはその時の事業者の裁量で、拡大しないことが『経営意欲がない』と読み替えることは行き過ぎです。『捏造された数字』と言わざるをえません」
データの不備が指摘されているのは『経営意欲』についてのデータだけではない。林野庁の説明資料では「意欲の低い森林所有者のうち7割の森林所有者は主伐の意向すらない」と断じられている。なお、「主伐」とは、伐期に達した成熟した木を切ることを意味する。