柳瀬氏は、東大法学部を卒業後、1984年に当時の通商産業省(現経済産業省)に入省した。その後の経歴を見ると、絵に描いたようなエリートコースを歩み、麻生太郎総理の秘書官を務めた後、将来の次官候補が就くことが多い大臣官房総務課長を経験している。その後、第二次安倍政権で、二度目の総理秘書官に就いた。二人の総理に仕えるというのはかなり異例のことだ。経産省に戻った後も、局長ポストでは最も重要な経済産業政策局長を務め、昨年夏から、事務次官級の事務方ナンバーツーである経済産業審議官に就任している(審議官という名前がついているが、普通の審議官とは全く格が違い、局長や官房長、外局の資源エネルギー庁長官、中小企業庁長官などよりも上で、格としては、事務次官級である)。

 現在、経産事務次官は、82年入省の嶋田隆氏だ。2年下の柳瀬氏は、当然、将来の有力次官候補ということになる。

 ちなみに、安倍総理の政務の秘書官は、あの有名な今井尚哉(たかや)氏だが、彼は82年入省で次官の嶋田氏と同期だ。政務の秘書官では、小泉純一郎総理の時の飯島勲氏が有名だが、彼らはみな政治家の秘書として雇われていた人で、その雇い主がたまたま総理になって、政務の秘書官に抜擢されたというものである。したがって、政務の秘書官に官僚がなるのは極めて珍しい。

 つまり、通常は、経産省から秘書官となった場合、総理の側近に経産省の官僚がいるということは今まではなかったのだが、柳瀬氏の場合は、総理の他に経産省の先輩である今井氏がもう一人の事実上の上司として存在していたということだ。さらに、安倍内閣では、この他にも、内閣広報官兼総理補佐官として、76年入省の長谷川栄一氏がいる。その意味では、柳瀬氏は、ただでさえ大変なのに、2人も余計な小舅がいて、ものすごく苦労しているという噂もよく聞かれた。

 余談だが、私は、柳瀬氏の4年前に通産省に入省した。もちろん、彼のことはよく知っているが、彼の人となりについて、あまり嫌な印象を持ったことはない。議論していても、直球型という感じだった。今井氏に比べれば常識的な人間だという印象である。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?
次のページ
安倍首相も知っていた?