しかし、ことが贈収賄という問題になれば、証拠が出そろっていない「疑惑」の段階でも、一般人が、総理を収賄容疑で検察に告発するという事態も十分にあり得る。

 国家戦略特区の結論が出た17年1月20日まで、安倍総理が加計学園の申請を知らなかったと言えるのかどうかは、この問題の肝となる論点なのである。

 15年4月13日に官邸での会談があったと認めれば、芋づる式に、総理が17年1月20日の前に本件をよく知っていたという結論に結び付くことを恐れて、官邸は、とにかく会談そのものを否定しようという作戦を取ってしまったのではないだろうか。柳瀬氏は、そのラインを必死に守っているということだろう。

 以上は、安倍総理の秘書官だった者として、会談を否定する動機であるが、この他に、柳瀬氏が自分の個人的な利益のために会談を否定したという側面もあったと思われる。

 前述の通り、柳瀬氏は、経産省のエースであり、順当に行けば、次官を狙える位置にいた。今もそうである。しかし、以前とは異なり、安倍政権下では、上司である経産省嶋田現次官に気に入られれば次官になれるという保証はない。安倍総理に嫌われると出世するのが難しいというのは周知の事実だ。となれば、仮に、会談の事実を認めて総理を困らせると、安倍総理に「裏切り者」と思われて、出世を妨げられたり、ひどい場合には、勇退させられる恐れがある。

 そう考えると、柳瀬氏には、会談を認める選択肢はなかったのかもしれない。そういう状況下で、彼が選んだのが、「記憶の限りでは」「記憶の範囲内では」という留保をつけたうえでの、面会事実の否定だ。この留保をつけておけば、最終的に証人喚問されたときに、記憶にないという逃げ口上が使える。最悪の場合には、今思い出しましたと前言を翻しても、ギリギリ嘘をついたことにはならない。

 そういう計算をしながら、会談の事実を否定して、安倍総理に恩を売り、出世したいという個人的利益を求めていたとしても不思議ではない。

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世論は柳瀬氏がウソをついていると思っている