第三に困るのは、会談の事実を認めると、参加者が誰だったかも言わなければならなくなることだ。この会談には、加計学園事務局長が参加していたので、国家戦略特区の自治体と話しただけでなく、加計学園案件ということで話をしたということがわかってしまう。また、総理秘書官が会った相手が、県の課長クラスだということもわかってしまうが、いかにもバランスが悪い。言葉は悪いが、官邸の感覚では、特別の事情がなく総理秘書官が県の課長「ごとき」と会うのかというところだ。いかにも不自然なのである。そんなことが可能だったのは、総理と加計孝太郎氏の特別な関係があったからだと疑われるのは確実だ。加計学園の幹部の事務局長が同席したとなれば、疑惑はダブルで深まることになる。

 そして、これら三つの疑惑全ては、加計学園が今治市の国家戦略特区の事業者に決定した2017年1月20日の段階まで、安倍総理は加計学園の話をずっと知らずにいたという総理答弁に収斂してくる。安倍総理は、過去の答弁を修正してまで、この点を強調している。

 総理は、加計孝太郎氏と、頻繁にゴルフや宴席を共にしているが、その費用負担について、奢ったり奢られたりしていると国会で答えている。割り勘ではないのである。実際には、かなりの費用負担をしてもらっているのかもしれない。もし、ほとんどを安倍総理が支払っていたのであれば恐らくそう答弁するだろうが、そう答えていないところを見ると、むしろ大半を加計孝太郎氏側に持ってもらっていたのではないかという疑いが出てくる。

 一方、国家戦略特区の仕組み上、その最高責任者は、安倍総理である。仮に、特区の申請をしている者からの接待を受けていたとなると、職務権限があり、加計孝太郎氏から話を聞いていたとなれば、贈収賄の構成要件を満たす可能性が出て来る。

 マスコミは、大臣規範(2001年閣議決定。「関係業者との接触に当たっては、供応接待を受けること、職務に関連して贈物や便宜供与を受けること等であって国民の疑惑を招くような行為をしてはならない」と定めている)違反になると報じているが、そんな生易しい話ではない。大臣規範の話なら、政治責任や倫理的な責任ということにとどまり、安倍総理の性格からして、形だけ謝罪して終わりと考えるかもしれない。

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「記憶の限りでは」と述べたことの背景