「2番で使っていただけたので、自分としては初回のバント、一発で決められたというのは僕にとっての武器でもありますし、そういうところで僕は勝負していかないといけないと思っているので、そういう意味では1打席目のバントと2打席目、今宮さんにいい走塁をしていただいて、打点につながったあの打席の2つがよかったかなという気がします」

 犠打、犠飛、そして適時打。これぞ「2番」の働きには、抜擢した稲葉監督も手放しの褒めようだった。

「トップチームだと、どうしても舞い上がってしまったり、思い切りのよさが裏目に出たりするんですけど、その中で、松本選手は特に送りバントをしなきゃいけない、進塁打をしなきゃいけないという、そういう自分のやるべきことをしっかり頭の中で整理してやっているというところは意識の高さを感じましたし、こういうことをチームに帰っても続けてくれると、ジャパンというチームでのつながりという面では、必要になってくる選手の一人になってくると感じました」

 また、「9番」も特筆すべきポイントになる。国際試合はDH制でもあり、さらに各国のトップ級が投げてくるために投手力が高いので、下位打線でのチャンスメークでいかに上位打線につなげるかが得点への大きなカギになってくる。

 その「テーブルセッター」として、稲葉監督が重視しているのが「ラストバッター」なのだ。1試合目でも、2点をリードした七回無死1塁の追加点機に、稲葉監督は9番の田中に対し、カウント3-2からヒットエンドランのサインを出した。その意図を指揮官が説明する。

「要は、あそこでスチールのサインではなく、エンドランのサインを出したのは、田中選手は当然当てるのも上手いし、ファーストランナーの小林(誠司=巨人)選手はそんなに足が速くない、スチールというよりはエンドランで、とにかくボールを転がしてくれてランナーを進めると。そういう意図というものはしっかり選手たちに話した。そういう1つひとつのサインの中で、選手に明確にこういう意図なんだよと伝えながらやるということ、こっち側の意図も選手に伝えていくことも大事だなと」

 田中はボテボテの捕ゴロとはいえ、走者を二塁に進めることができ、役割は果たした。得点にはつなげられなかったが、指揮官の意図がはっきりと示された一手でもある。

次のページ
“野村方式”を採用する稲葉監督