豪州に勝利し笑顔でインタビューに応じる稲葉監督 (c)朝日新聞社
豪州に勝利し笑顔でインタビューに応じる稲葉監督 (c)朝日新聞社

 稲葉ジャパンの今季初となる国際マッチは、オーストラリア代表を相手に2連勝。国内組オンリーというオーストラリアのレベル、あるいは3月初旬という時期設定の是非など「?」を付ける議論もかまびすしい。しかし、私があえて主張したいのは、2年後に控えた東京五輪で、開催国として「金メダル獲得」が絶対的な目標とされる稲葉ジャパンにとって、監督の野球観を選手に浸透させ、チームとしての一体感、代表としてのプライドと五輪へ向けての“思いのベクトル”を、選手たちに同じ方へ向けさせるためには、時期的にも重要なゲーム設定ではなかったかと考える。

 だから、今回の結果も肯定的に捉えたい。というより、今回の2試合の取材を通して、稲葉篤紀監督のやろうとしている、目指す野球の方向性が、選手たちにも十分に伝わったのではないだろうか。その“根拠”として、2試合での「打順」に見えた、稲葉構想の『肝』の部分を挙げてみたい。

 それは「2番」「6番」「9番」の起用法だ。

      1試合目       2試合目
【2番】 菊池涼介(広島)  松本剛(日本ハム
【6番】 外崎修汰(西武) 上林誠知(ソフトバンク
【9番】 田中広輔(広島) 今宮健太(ソフトバンク)

 いわゆる「つなぎ」のポジションに入れているプレーヤーだ。この6人、所属チームでも重宝されている個性派、キャラの立った渋い選手たちでもある。

 菊池は昨季、セ最多の30犠打。巧みな右打ちや高い守備力、走力を含め、まさしく日本を代表する「2番」。一方の松本は、今季7年目の24歳。昨季、115試合出場でブレーク。打率.274のアベレージもさることながら、二塁打17本、犠打21と大技も小技もこなせる。年齢制限付きでの選出だった昨秋のアジアプロ野球チャンピオンシップに続き、今回は初のフル代表となった松本だが、打力での“伸びしろ”という点では、2年後の五輪イヤーには菊池を上回る可能性も秘めている。

 その松本が2試合目で先発出場すると、一回無死1塁で初球に送りバントを一発で決め、先制点へのお膳立て。2点リードの二回無死二、三塁ではライトへ犠牲フライ。三走の今宮が、一度は本塁でアウトのコールをされたが、稲葉監督の「リクエスト」でリプレー検証、判定が覆っての3点目を挙げると、六回1死三塁では右へ流して6点目のタイムリーを放つなど2安打3打点の活躍を見せた。

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「ラストバッター」を重視