さらに平昌五輪の現場は、あまりモチベーションが上がらなかったのではないか、とも推測する。
「やっぱりアナウンサーは夏季五輪を担当したいという気持ちが強いです。冬季だったとしても、2010年のバンクーバー五輪や2014年のソチ五輪など、非日常を感じられる場所ならまだしも、平昌五輪が開催された韓国は、日本から近く、文化や食もさほど変わらないので、モチベーションも上がらないアナウンサーもいたのではないか」(村上氏)
このような事情がありつつも、抜擢されたアナウンサーにとって五輪は「晴れの舞台」となる。
「特に、民放で30代のアナウンサーだと、『良い言葉を引き出したい』『次の五輪のチャンスを掴みたい』と余計な力が入ってしまいがちです。本来は、選手の自然な表情を引き出すのがインタビュアーの役割なはず。今回、物議を醸したアナウンサーは選手へのリスペクトや、スポーツへの愛が足りない気がします」(同前)
五輪中継は国際オリンピック委員会(IOC)に放送権料を支払うことで行うことができる。アメリカのテレビ局、NBCは、2014年ソチ五輪から2032年夏季五輪まで10大会分の金額、約120億ドル(約1兆3000億円)を支払い、放送権を獲得した。これは、IOCの全収入の約4割にあたる。一方、日本は、NHKと民放によって結成されたジャパンコンソーシアム(JC)が、IOCと契約しており、18年平昌から24年パリの4大会分で契約した放送権料は約1100億円だ。
「テレビ朝日が放送している競技に、TBSのアナウンサーがインタビュアーで出ていたりするのはこうした理由で、各テレビ局が合同のチームになっているからです。どの局が何の競技を放送するかは五輪の放送権料を多く支払っているNHKとの協議と、くじ引きで決まります。実況やインタビュアーの人員配置はその後で、実況は何年もその競技を担当している人がやりますが、インタビュアーは、五輪の数ヶ月前に決まることが多く、その時期から取材し始めても、知識としては浅く、インタビューで気負ってしまうこともあるのではないでしょうか」(同前)
スポーツ中継の減少でスポーツ専門のアナウンサーの活躍の場が減っていることも原因の1つと指摘する声もある。
「地上波でのスポーツ中継はだいぶ減ってきており、スポーツ選手にインタビューする機会も昔より少ない。また、冬季五輪の種目を取材し続けている人は少ないため、最大限の努力はしているでしょうが、競技に詳しくない状態で臨むアナウンサーもいることになります」(民放関係者)
3月9日から18日までの10日間でパラリンピックが開催される。各局アナウンサーの汚名返上はなるか。注目したい。(田中将介)