記念撮影に応じるカーリング女子の選手たち(c)朝日新聞社
記念撮影に応じるカーリング女子の選手たち(c)朝日新聞社
萩本欽一(c)朝日新聞社
萩本欽一(c)朝日新聞社

 平昌五輪の17日間の熱い戦いが終わり、日本は冬季五輪で過去最多となる13個のメダルを獲得。フィギュアスケート男子で連覇を達成した羽生結弦をはじめとして、日本選手は華々しい活躍を見せていた。

【カーリング女子“ブレーク”の立役者は欽ちゃん?】

 そんな中でも、特に注目度が高かったのが、カーリング女子日本代表である。彼女たちは3位決定戦でイギリスを破って銅メダルを獲得。男女通じてカーリングでは史上初のメダルを日本にもたらした。

 カーリングが世間でこれほどの盛り上がりを見せた理由の1つは、テレビ中継で競技中の選手の会話が直接聞こえてくることだろう。選手たちは胸にピンマイクを付けて競技に臨んでいる。選手同士が作戦を練ったりしている様子がそのままテレビで流されていたのだ。

「氷上のチェス」と呼ばれるほど戦略性の高いチームスポーツであるカーリングでは、選手同士が話し合いながら競技を進めていく。そこでの会話が聞こえると、視聴者は選手の考えていることが理解できて、より競技を楽しめるようになる。また、映像では緊迫したように見える場面でも、当の選手は意外と落ち着いた雰囲気で会話をしていたりする。そのギャップも見どころの1つだ。女子選手が交わす北海道なまりの「そだねー」という言葉も話題になった。

 そもそも、カーリング中継でピンマイクを使うという試みが実現できたのは、テレビの歴史の中で性能のいいピンマイクが開発され、導入されてきたからだ。音はきちんと拾えるのだが、小さくて邪魔にならない。そういうマイクが作られるようになったことで、競技中に選手の声をクリアに聞くことができるようになった。

 このピンマイクを日本のテレビで初めて本格的に導入したのは萩本欽一であると言われている。数十年前、萩本はニューヨークのブロードウェイでミュージカルを見たときに、舞台上で動き回っている役者たちの声がマイクを通してはっきりと聞こえてくることに驚いた。そこで、終演後に舞台のスタッフに疑問をぶつけてみたところ、こんな答えが返ってきた。

「何言ってるんだ、俺たちが使ってるのはあなたたちの国のマイクだよ」

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら
次のページ
自分の番組でピンマイクを導入することにしたが…