15歳の少年が描いた絵。ナイフを向けられる自分と、「Hope」の文字(撮影/石井志昂)
15歳の少年が描いた絵。ナイフを向けられる自分と、「Hope」の文字(撮影/石井志昂)
少年が描いた「自分の目に映る自分の姿」。そこには「ばか」「無知」という言葉で埋め尽くされている(撮影/石井志昂)
少年が描いた「自分の目に映る自分の姿」。そこには「ばか」「無知」という言葉で埋め尽くされている(撮影/石井志昂)

 神奈川県座間市で男女9人の遺体が見つかった事件をきっかけに、SNSに「死にたい」と書き込む若者たちの命をどう守っていくのか試行錯誤が始まっている。不登校新聞の編集長、石井志昂さん「これからは多くの人が『不安な発言』をくり返す10代と出会う機会が増えていくかもしれない」と指摘する。そのときは、どうしたらいいのか。多くの当事者に関わってきた、石井さんの結論とは。

【写真】少年の目に映る自分の姿には「ばか」「無知」の文字

*  *  *

 先日、15歳の男の子が新聞社を訪ねてきました。ネットで私のことを調べ「話をしたい」と訪ねてきてくれたのです。聞けば彼は、いま希望を持っているそうです。

 それは「通り魔に刺されて殺されたい」ということ。

 彼が「最近、描いた」という通り魔の絵には、たしかに「hope」と書かれています。SNSで自殺願望者を誘い出し殺害した座間事件のことがあったせいか、その発言に私も驚きました。

 彼はなぜ「通り魔被害」を希望しているのか。話を聞いてみるとその背景が見えてきました。

■大人には見えない荒れた学校

 彼は昨年9月から不登校中という現役バリバリの当事者です。

 彼の通っていた中学校は「とても荒れていた」そうです。ほとんどの生徒は終始イライラし、人間関係はギスギスしていました。教室のいたるところでいじめが頻発し、教室内は「いつ大爆発がおきるかわからない雰囲気」だったと言います。

 彼にとって多少の息抜きになっていたのは部活でしたが、やがて部活内でもいじめが始まりました。いじめの標的は次々と変わり、彼自身も標的になりました。

 部活の顧問に相談すると、顧問は相談内容に激怒。「つらいことなんて大人になったらいくらでもある!」と彼を一喝し、部活メンバーには「これ以上、問題を起こしたら解散させる」と怒鳴りました。いじめが「教師を煩わせるトラブル」程度にしか見えなかったのでしょう。

著者プロフィールを見る
石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

石井志昂の記事一覧はこちら
次のページ