そこで基本的に第三者は「気持ちを聞くだけ」に徹すると、おおよそまちがいがありません。気持ちを聞けていれば、おのずと相手が「健全」な判断を下してくれます。

 もしも「これは不安だな」と思ったら、その場では答えを出さず、後日、専門家や信頼できる人に相談して対応を決めてください。「後日対応」は「保留」ではありません。いまどんな状況なのか、前例となる対応はあったのか、複数の人に相談し、情報を集めて総合的に判断するのです。

 もちろん緊急性が高い場合は「安全第一」で動いてください。その場合も状況が許すなら一瞬だけでも本人と離れ、手短に他人と話すと「対応の客観性」は一気に高まります。

■とくに親が気にしなければいけない点

「後日対応」は、言葉にすればかんたんですがじつに難しいことです。とくに親ならできません。親にとってわが子は、誰よりも大事な存在だからです。誰よりもわが子が幸せになってほしいから「すぐに解決してあげたい」とNGを踏んでしまいます。

 なので、親の方ほど「不安なときほど後日対応」を肝に銘じてください。こうした対応の積み重ねが「子どもの笑顔につながっていった」という話をたくさん聞いてきました。

「親だからNGを踏む」のも事実ですが、親だからこそ子どもにとって唯一無二の支えになることもまた事実です。親の気持ちが折れないよう、親自身もたくさんの人に支えられながら、ぜひお子さんと向き合っていただければと思っています。(文/石井志昂)

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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