5年に1度、国勢調査などを基につくられる厚生労働省「都道府県別生命表」。これによると、2015 年都道府県別の平均寿命(17年12月発表)は、女性2位が岡山県(87.67歳)、3位が島根県(87.64歳)だった。AERAムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』では、この生命表から「長寿県」が多い中国地方に注目。岡山、広島、島根の医学部に訪れ、最前線医療の取り組みを取材した。ここでは川崎医科大学を紹介する。
* * *
岡山県には、国立大の岡山大学の他にもう一つ、医学部がある。私立大の川崎医科大学だ。
医学部受験を志していれば、一度は気になったことがあるかもしれない。はっきり言おう。「学費が高い」ことで知られているからだ。
6年間でかかる学費は4700万円超。ただでさえ高額といわれる私立大医学部のなかでも、最も高い。
だが、実際に取材に訪れると「高額」といった印象ではなく、「9年間一貫教育」を掲げ、医科大学唯一の附属高校が強みに高度な先進医療と良医の育成のための施設が充実していることに驚く。
■全国的に先駆けとなる医学教育体制が充実
岡山大学医学部を卒業後、勤務医を経て開業し、岡山市医師会長も務めた川﨑祐宣医師が1970年に岡山県倉敷市に創設したのが、川崎医科大学と川崎医科大学附属高校だ。
「本学は、中四国地方唯一の私立医科大学です。当時の医師不足、一部医師のモラル低下など、医学教育を憂慮した川﨑祐宣医師が医学教育を改革し、良医を育成するために創設しました」
川崎医科大学の福永仁夫学長が、創設の理由をこう語る。
創設者の川﨑医師が「宣伝するのははしたない」と考えていたため、今まであまり大々的にPRしてこなかった。だが、創設以来、医学教育に力を入れ続けてきた川崎医科大学が「先駆け」となったものも少なくない。
1981年に、キャンパス内に現代医学教育博物館を開館した。健康教育の推進を目的に、無料で一般に公開している「健康教育博物館」は、体験やクイズにチャレンジし、医学や健康について楽しく学べる。学芸員の中村信彦さんが言う。