――売り上げばかりでなく、利益を見る必要があるということですね。
利益だけではありません。むしろ問題はその先です。利益が出たとしてもキャッシュがついてこないということもあるのです。
最近も、あるベンチャー企業が売上数ばかり追っていたため、キャッシュが回らなくなり倒産しました。経営者はキャッシュフローを意識しているはずですが、社員が売り上げや利益しか見ていなかったのでしょう。社員がみなキャッシュフローについて理解していれば、経営を軌道修正できたかもしれない。
――なぜキャッシュフローを見ることが重要なのですか。
たとえば、量販店などでは、仕入れ値を安く抑えるために商品をたくさん仕入れたりします。営業担当、販売担当は、在庫がたくさんあったほうが、まとめ売りや安売りができて売りやすい。
しかし、これは危険です。仕入れの支払いと、販売して代金が入るまでにはタイムラグがあります。その間、手元にはキャッシュが足りなくなり、資金繰りは苦しくなります。在庫を大量に抱えすぎてなかなかはけない場合、大幅に値下げして売ろうとしますが、売り上げの割に利益は増えないし、手元のキャッシュも増えない。このような理由で、黒字でも支払いが追い付かず倒産してしまう会社もあるんです。キャッシュフローが見えていないと、このようなことが起こります。
売り上げだけでなく利益、さらにキャッシュフロー、これらを総合的に見て判断することが計数感覚のポイントであり、儲けの「本質」をとらえる秘訣(ひけつ)です。このような視点をもっていることを会議などの場でしっかりアピールできれば、きっと社内で一目置かれるはずです。(取材・構成/安楽由紀子)