■商談相手の心をつかむのは天気の話より「数字」
――経営以外の場面で、ビジネスパーソンが計数感覚を生かすコツはありますか。
私は、独立するまで会計ソフトの営業マンをしていましたが、その頃からビジネストークに会社数字を使っていました。
たとえば「売上高」という数字です。企業の売上高を、従業員の数で割ったものを「1人当たりの売上高」といいますが、これには業界別の平均値が出ています(経済産業省のホームページなどで調べることができます)。
私が営業で会社を訪問するときには、必ず裏手の受け付けでその会社の従業員のタイムカードをチェックしていました。手に取って見ることはできませんが、パッと見ただけでも正社員数、男女比、アルバイト・パートの人数がおおよそ見当がつきます。その業界の平均の「1人当たりの売上高」が1000万円だとすれば、10人の正社員がいれば1億円と計算できます。
あとで社長と面会したときに、折を見て「御社の年商はいくらですか」と質問してみます。もし「1億5000万円くらい」と答えたら、標準値を5000万円も上回っていることがわかる。すかさず「すごいですね、他社と差がつくような経営をなさっている」と褒めるんです。
「なぜそんなことがわかるのか」と聞かれて種明かしをすれば、会社数字に強い「デキるビジネスパーソン」をアピールできる、というわけです。
ふつうの営業マンは、会社数字のことは気にとめません。しかし、相手にとってみれば、経営者目線で話せる計数感覚がある営業マンのほうが頼もしく見えますし、好感が持てるはずです。
■利益だけを追いかける社員の落とし穴
――それは社内でも通用しそうな方法ですね。上司、社長と話すときに計数感覚があれば、他の社員よりも信頼されそうです。
そうですね。昔いた会社で、上司が「たくさん売れれば利益はついてくる」と言っているのを聞いて驚いたことがあります。たいていの社員は、会社数字といっても売り上げしか見ていないんですね。確かに、右肩上がりの時代はそれでよかったのかもしれません。しかし、本来は「たくさん売れれば利益がついてくる」とは限りません。人件費その他の経費をかけているのですから、費用対効果がどれほどあるか。決算してみたら、実は利益がついてきていなかったということだってあります。