リストラ、倒産のリスクが高い現代、ビジネスパーソンに求められるのは、自社、取引先など企業の状況をきちんと把握し、どこの会社にいっても「仕事ができる」と評価される能力だ。
『数字オンチがみるみるなおる! 計数感覚ドリル』(朝日新聞出版)の著者で計数感覚・養成コンサルタントの千賀秀信さんは、「会社数字から経営の概要が理解でき、最終的に儲けの『本質』が見えるようにならないと仕事が出来る人とは言えない」と語る。千賀さんが提唱する「計数感覚」とははたして何なのか? 話を伺った。
■会社の数字に強くなるだけでは足りない
――千賀さんが提唱されている「計数感覚」とは、どういうものでしょうか。計算能力とは違うものですか。
「会社の数字に強くなる」というと、簿記会計を勉強すればいいと思われがちですが、実はそれだけでは不十分です。
経営を「自動車を運転すること」にたとえてみましょう。簿記会計を勉強して理解できるのは、財務諸表などの決算書のしくみですが、これは、いわば「車の構造」にあたります。構造を詳しく知れば、車を組み立てられるようにはなりますが、それだけで運転がうまくなるわけではないですよね。
「運転技術」にあたるのは、経営戦略やマーケティングです。これらを学べば、商品をいかに売るか、顧客にどのようにアプローチするかといったことはわかります。しかし、会社数字に強くはなれません。
運転技術があれば、とりあえず車を走らせることはできるでしょう。しかし、プロレーサーのような一流の運転手は、車の構造がどのように走行に関係しているのかを熟知しているものです。
「一流の運転手」のように、簿記会計などの会社数字の知識を、実際の経営に結びつけられる能力、それが計数感覚なのです。
実は、計数感覚を持っている人は、経営者のなかでも意外と少ない。
ビジネスのアイデアにあふれている人は、たいてい簿記会計を勉強しないまま起業してしまいます。逆に数字に強い人は税理士などの専門職に就くことが多い。「計数感覚」とは、簡単にいうと「仕事のことを数字で考えられる能力」です。
だからこそ、計数感覚を身につけたビジネスパーソンは、会社で重宝され、評価されるのです。