残るのは楽天、DeNA、中日の3球団だが、中日は右の代打は不足しているものの、福田がようやく殻を破りつつあるところに村田をぶつけるのは得策ではないように見える。村田が加入することで伸び悩んでいる高橋の出番も確実に減るだろう。そして何より投手で松坂を獲得しているだけに、野手でも同学年の村田の獲得となれば課題の世代交代が遅れることは間違いない。今シーズンだけを見れば悪い補強ではないが、長期低迷から脱出するためには一度舵を切った若手路線を戻すようなこれ以上の補強は賛成できない。

 そこで最終的におすすめしたいのは楽天とDeNAになるが、一つを選ぶのであれば古巣であるDeNAに獲得をおすすめしたい。宮崎、ロペスというタイトルホルダー二人がいるものの、宮崎は2年目のジンクス、ロペスは年齢面とともに不安要素を抱えており、控えの層も決して厚いわけではない。レギュラーの二人が調子を落とした時に安心して起用できる選手がいないのが現状である。FAで自ら球団を去ったという経緯はあるものの、優勝経験のある選手が少ないだけに、巨人というプレッシャーのかかるチームで結果を残し続けてきた村田の存在は大きなプラスになるはずだ。

 現時点での報道を見ていると決して楽観できる状況ではないが、キャンプ、オープン戦で故障者や選手の不調によって緊急補強が必要となるチームは必ず出てくる。その時のためにもまずは自主トレをしっかり行い、いつ呼ばれても大丈夫なコンディションを維持しておくことが重要だろう。仮に開幕までにオファーがなかった場合は、本人も示唆したように実戦感覚を養うために国内の独立リーグでプレーしながら、7月末の支配下登録期限まで待つというのも良い選択肢と言えるだろう。

 球界の一大勢力だった松坂世代だが、名球会入りの基準をクリアした選手はいまだおらず、そして最も近い位置にいるのが村田である。もちろん個人成績のためにプレーするわけではないが、あと135本に迫った大記録のためにも、『男村田』の復活に最後まで期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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