さて、現実を踏まえた、今後の話もしてみよう。中日は2013年から5年連続Bクラスと低迷が続いている。昨季、2桁勝利を挙げた投手がおらず、大野雄大の7勝が最多。チームの浮上には、投手陣の再建が急務だ。しかし、現時点でもタレント不足は否めない。開幕時の先発ローテーション候補に挙がるのは、その大野をはじめ、昨季5勝の22歳・鈴木翔太、21歳の左腕・小笠原慎之介、2年目の柳裕也らの若手に、33歳の吉見一起、39歳の山井大介のベテラン勢。新外国人の左腕・ガルシア、右腕・ジーの加入に、4年連続50試合以上登板のセットアッパー・又吉克樹の先発転向も検討されているが、質量とも、現時点では“弱い”といわざるを得ない状況だ。

 松坂には、全盛期の150キロ超、浮き上がるストレートはもう期待はできないとはいえ、その“術”はある。横浜高時代に春夏の甲子園を制し、レッドソックス時代にワールドシリーズを制覇、五輪で2度、WBCでも2度日本代表になった“レジェンド”の存在は、若い投手陣の中で、豊富な経験値がもたらす効果は計り知れない。前述したように、昨季も一度は、ソフトバンクの先発ローテの一角を任されようとしていたこともある。「もちろん先発はやりたい」という松坂が、中日投手陣の“貴重な1枚”になり得る可能性は十分にある。そして、戦力としてはもちろんだが、グラウンド外でも、中日に大きな効果をもたらせる“潜在能力”も秘めているのだ。【後編(26日配信予定)に続く】(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。