宝くじに当たった人の多くがその後、破産しているというのはよく知られた話ですが、カップルの片方が社会・経済的に成功したことによって、カップルが破たんしてしまうのも少なからずあります。お互いに相手の変化についていけなくなったり、逆に自分の変化についてきてもらえない相手に不満を感じるようになってしまうのです。

 成功した男性が糟糠(そうこう)の妻を捨てて他の女性と結婚するとか、そこまで行かなくても愛人をつくったりするというのはありがちな話です。アインシュタインは学者として成功すると時を同じくして新しい恋人を作り、ノーベル賞の賞金を貧しかった時代を共に過ごした妻との離婚の慰謝料にしました。

 逆に、どちらかが病気になったりしても同じようなことになる可能性があります。ただ人は成功しているときは行け行けドンドンな気分なのに対して、パートナーが病気だと、ハイな気分にはなりません。そういうパートナーを切り捨てるような形になるのは良心の呵責もあり、パートナーチェンジのようなトラブルが起こる可能性はうまくいった時より低くなりますが、構図としては一緒で、ないわけではありません。

 好きな人を介護をしなければならなくなることも大きなストレスです。介護自体、不幸な事件が多数起こるほど大変なことですが、妻の介護をしなければならないというのは、恋人としての関係と、介護―被介護の関係性との2重の関係性を持つことになります。これは心理学でダブルロール(2重役割)と言われているものの一例です。実際、日本の多くの家庭では子どもができると、両親という関係性ばかりになってしまい、恋人としての関係性が希薄化してしまうことが多いのは、健全に二重の関係性を維持するのは心理的にとても疲れることだからです。

 例えば、子どものとき、自分の親が、自分の学校の担任の先生だと想像してみてください。学校での教師―生徒関係と、家での親子関係がお互いに影響することなく適切に関わるのは難しいですよね。

 それに対する一番シンプルな対策は、同じ人と2重の関係を持たずに、関係ごとに相手を分けることです。親子は変えられないので、自分の子どもの担任にならないようにするというようなことです。

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