広島高等裁判所が四国電力の伊方原発3号機について12月13日、運転の停止を命じた。この裁判の経緯を整理すると、まず、広島県などの住民4人が同原発の運転停止を求める仮処分を申し立て、広島地方裁判所は、ことし3月にこれを退ける決定をした。
これに対して、住民側は決定を不服として抗告し、広島高裁で、四国電力が想定する地震の最大の揺れや周辺の火山の噴火の危険性をどのように評価するかなどが争われていた。
13日の決定では、広島高裁の野々上友之裁判長が、熊本県にある阿蘇山が噴火しても火砕流が原発に到達しないと主張する四国電力の根拠となった噴火のシミュレーションについて、「過去に阿蘇山で実際に起きた火砕流とは異なる前提で行われており、原発に火砕流が到達していないと判断することはできないため、原発の立地は不適切だ」とし、さらに、「阿蘇山の地下にはマグマだまりが存在し、原発の運用期間中に、巨大噴火が起きて原発に影響を及ぼす可能性が小さいとはいえない。巨大噴火が起きた場合、四国電力が想定した火山灰などの量は少なすぎる」と結論付けた。
その上で、「火山の危険性について、伊方原発が新しい規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理で、住民の生命、身体に対する具体的な危険が存在する」として、運転の停止を命じたものである。
ただし、現在、広島地方裁判所で並行して進められている裁判で異なる結論が出る可能性があるとして、運転停止の期間は来年9月30日までとした。
高裁レベルで原発運転の停止を求めたのは初めてなので、この決定は、その意味で大きな意味がある。
また、この決定では、巨大噴火の可能性が小さいということを疎明(裁判官に確信とまではいかないが一応確からしいという推測を得させる程度の証拠をあげること)できなければ、過去最大規模の噴火があると想定すべきだとした。これを他の原発に当てはめると、日本中の原発が動かなくなることが必至だという意味でも重大な決定だと言える。
さらに、訴えを起こせる住民の住所地の範囲を原発から半径100キロメートル程度まで認めたことも重要だ。この判断に従えば、訴訟を起こせる住民の範囲が大きく拡大することになる。
このように、今回の決定は、単に運転停止を認めたという以上に大きな意味のある決定だと言ってよいのだが、では、日本の司法が原発を止めるうえで、この決定が今後、決定的な役割を果たしてくれると考えてよいかというと、必ずしもそうは言えない事情が見え隠れする。