「料理好きだった人が料理の仕方を忘れても台所に立とうとするように、好きなものや人としての本質は変わっていないのです」(同)
だからこそ、何かを決めるときに本人の意思を確認することは大切です。デイサービスやショートステイなどを検討する場合も、本人に行きたいかどうかを聞くこと。施設に実際に行き、気に入った場所に通ってもらうのがいいのです。
認知症の人と家族がうまく暮らしている家庭では、少々失敗があってもできることは本人にやってもらい、最低限の手出ししかしないそうです。
「うるさくいわれないのでご本人も気がラク。気持ちがリラックスすると脳の働きも活発になり、会話が成立することも多くなります。そんなときに家族は喜びを感じ、『元気でいてくれてよかったな』と思うのです」(同)
■具体的なケースの対応方法
日常生活での対応の仕方について、一問一答形式で繁田医師に答えてもらいました。
【Q1】日にちを聞いても答えられないので、心配です
【A1】無理に答えさせないほうがいいです
進行予防のために、「今日は何月何日かわかる?」などの質問をしている家族もいらっしゃるでしょう。しかし、認知症の人は急に聞かれるとパニックになり、答えられないことが大きなストレスになります。「あなたは日付もわからないダメな人間」だと家族が本人にメッセージを送ることにもなります。「スイカのおいしい季節になったわね」「来月はお墓まいりしないとね」など、季節を連想させることを話しかけて、思い出させてあげるのがいいでしょう。本人がわからないところは、家族が助けてあげましょう。
【Q2】家にいるのにどこかに帰りたがります
【A2】家の居心地が悪いということを理解しましょう
認知症の人が「ここは家ではない。帰りたい」と訴えることはけっこうあります。結婚前に住んでいた場所や、実家を思い出して言っている場合もあります。しかし、自分の家であろうがなかろうが、そこが快い場所であればそこにいたいと思うはずです。つまり、このような場合、ご本人は家の居心地が悪いと感じ、「どこか別の場所に行きたい」という思いからこのような言葉を発している可能性もあるのです。ご家族はご本人につらくあたってしまった、などの出来事がなかったかどうか、考えてみるといいでしょう。