男女の間には絶望的な溝があると臨床心理士の西澤寿樹さんは指摘する。埋めるための方法はあるのか… (※写真はイメージ)
男女の間には絶望的な溝があると臨床心理士の西澤寿樹さんは指摘する。埋めるための方法はあるのか… (※写真はイメージ)

 東京・渋谷にカウンセリングルームを構え、数多くのカップルのカウンセリングを担ってきた臨床心理士の西澤寿樹さんが、男女間の問題をわかりやすく読み解くコラム。今回は「男と女の間にある絶望的な溝」について、その一つを解説します。

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 友人に鍼灸師がいます。彼は患者を仰向けにした状態で、しばらく膝に手を当てます。20秒もすると、「うーん、頭のあたりがもやもやしてちょっと痛いね」とか「胃の調子が悪いね」とか、言い当てます。「今日は肝臓がつかれているねえ」と言われてもそれは私には自覚がないのでわからないのですが、自覚がある症状については、ほぼ言い当てられます。

 何故わかるのか、何回も聞きました。彼の説明によると、膝に手を当てて私の体と自分の体を共鳴させて自分の体にどういう変化なり感覚があるかを観察する、のだそうです。

 これは、なるほど!です。何故なら、カウンセラーが使う基本テクニックの「共感」も基本は同じです。違いは、彼は、膝に手を当てて患者の体と自分の体を共鳴させるのに対し、カウンセラーは話を聞くことでクライアントさんの気持ちと自分の気持ちを共鳴させるのです。

 今日の話は、男女のすれ違いの素であるのと同時に、良い関係のために必須のアイテム「共感」です。

■男性が考える「共感」

 フランスからの留学生A君と、中国からの留学生Bさんが日本で意気投合し、付き合い始めました。BさんはA君に、「今日、A君の家でご飯作ってあげる」と言い、帰りが遅くなるA君の前に先に帰りました。

 A君は、ヨーロッパ人から見た誤解ですが、日本に近い中国人のBさんならおいしい日本の家庭料理を作ってくれるとすごく楽しみにしていました。が、帰ってみると、そこにはガレット(フランスの家庭料理でそば粉のクレープ)が焼かれていました。A君は思わず「ごはんじゃないじゃないか!」と怒鳴ってしまいました。一方、BさんはBさんで料理には若干自信があったからこそ彼の国の家庭料理を作ってあげたのに、自分が作ったものは食べ物ではない、と言われたように感じて大ショックです。

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西澤寿樹

西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

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