衆院解散当時、その解散の正当性を示すためにしきりに使われ、メディアを騒がせた言葉「国難突破解散」。
少子高齢化なども「国難」の説明に使われたが、「国難」という極度に苦境を表す単語を用いた主たる理由は「北朝鮮問題にどう対処するか」ということを問う選挙にしようとした、とみるのが自然である。
選挙戦が進む今となってはその言葉を聞くこともほとんどなくなったが、数日前にある候補者への意見調査を目にして、改めて「国難突破解散」という言葉を思い出した。
候補予定者に対して「北朝鮮への米軍による軍事力行使」について問うその調査(共同通信社)によれば、自民党の候補予定者のうち実に39.6%が米軍の軍事力行使を支持するとの結果であった。不支持は半分の20.5%にすぎない。維新の党に至っては、77.5%が支持であった。なお、公明党は支持34.6%不支持57.1%、希望の党は支持21.3%不支持57.5%、立憲民主党は支持9.3%不支持85.2%、共産党は不支持99.2%であった。
ここで問われている軍事力行使は、当然ながら、北朝鮮から攻撃があった際に自衛権の行使として反撃することではなく、いわゆる先制攻撃を意味する。北朝鮮がいかに脅威であっても、そもそも「先制攻撃」は、国連憲章をはじめとした国際法では認められていない。
しかし、そのような国際法の解釈はおいたとしても、この調査で「支持」と答えた候補者たちは、実際に米軍が北朝鮮を先制攻撃したら日本はどうなると思っているのだろうか。米軍が、北朝鮮の核兵器やミサイルをすべてピンポイント爆撃し、北は反撃できず、日本には被害が及ばないと思っているのだろうか。あるいは、強い姿勢を国民にアピールをすることが選挙に有利に働くと考えてそのように主張しているだけで、実際には、米国からの北朝鮮に対する軍事攻撃などは起こらない、と思っているのだろうか。
安倍首相もこの間、強硬姿勢を国際社会にアピールしてきた。北朝鮮との対話は「無駄骨に終わる」とニューヨークタイムズに寄稿を寄せ、国連でも「今必要なのは対話ではない」と演説した。
中国外交当局者が、まるで日本は米国に戦争をさせたがっているようだ、と言ったが、そう言われても仕方がない状況である。