職員が自分たちの天下り先確保のために仕事をするという構造を改めて、都民のために働けば報われるが、そうでなければ昇進も昇給もないという仕組みを作らなければ、どんなに改革をやろうとしても、大きな抵抗に遭って頓挫するか、何らかの抜け道を作って改革を骨抜きにされる。したがって、どんな改革よりも優先して進めるべきものが天下り根絶を含む公務員改革なのだ。

 しかし、小池氏のあるブレーンによれば、小池氏は、職員との決定的対立を避けるため、天下り問題に手を付けることを拒否したということだ。これでは、今後も東京都の改革は進まないだろう。

 つまり、都知事就任後の小池氏の「改革派」イメージもまた、全くのまやかしでしかない。このイメージを維持しているのは、やはり大手マスコミだ。小池氏を改革派扱いする報道は、「フェイクニュース」そのものである。しかも、大手メディアがこぞって流したのであるから、国民が騙されるのはある意味当然だろう。

■「小池モンスター・イフェクト」は政界全体に及んだ

 この小池人気は虚構のものであるにもかかわらず、「モリ・カケ」スキャンダルによって支持率急落のピンチにあった安倍総理をも惑わせた。小池氏側近の若狭勝衆議院議員や元民進党の細野豪志元環境相が小池氏と連携した新党づくりを始めた時、安倍総理の頭には、選挙を急がなければ、夏の都議選の悪夢が再現するという予感が走ったのだろう。臨時国会冒頭での解散という選択肢は、民進党・共産党などの野党共闘の準備不足を狙うという面もあったが、むしろ、この小池人気の亡霊に取り憑かれたという面の方が強かったのではないかと思う。

 私は、これを「小池モンスター・イフェクト」と呼ぶことにした。

 小池モンスター・イフェクトの影響を受けたのは、安倍総理率いる自民党だけではない。民進党元幹部もこの亡霊を怖れて、早々に内心で敗北宣言を出してしまった。前原誠司民進党代表が、希望の党との合流に踏み切ったのも、枝野幸男氏らが、唯々諾々とこれに従ったのも、民進党のままでは小池モンスターにやられてしまうと信じたからだ。

 マスコミもまた自分で作った小池モンスターを妄信する。連日小池氏の一挙手一投足を報道し続けることで、さらにこのモンスターの強大化を促進した。それがピークに達したのが、9月28日の民進党の決定だった。衆議院議員が全員離党して希望の党に合流するということになり、政権交代選挙になるという見方が一気に広がった。おそらく、この時点では、安倍総理をはじめ自民党幹部は、早期解散は間違いだったと後悔したのではないだろうか。

 それくらい「小池モンスター・イフェクト」は大きかった。

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