■「小池氏は改革派」というフェイクニュース

 日本のマスコミの問題を議論するのに、何故小池氏の例を取り上げるのか。そこにあるのは次のような問題意識だ。

――もし、日本に、望月氏のような記者が揃っていれば、都議会選での都民ファーストの地滑り的大勝利もなく、安倍総理が小池氏の国政進出を恐れて早期解散に踏み切ることもなかったのではないか。それどころか、そもそも小池氏が東京都知事になることさえなかったのではないか。その意味で、今日の政治の混乱を招いた最大の戦犯は、実はマスコミではないのか。――

 まず、どうして小池人気がここまで盛り上がったのだろう。小池氏のキャッチフレーズは「改革」だ。では、小池氏は本当に「改革派」だったのだろうか。

 自民党議員時代の小池氏は、防衛相や環境相などを経験したが、ほとんど実績はない。唯一あるのはクールビズだが、とても「改革」と呼べるようなものではない。そもそも、霞が関の改革派官僚(OB)たちの間では、小池氏が「改革派」とはみなされていなかった。官僚の間では、小池氏と言えば、単なる「右翼のパフォーマー」という位置づけだ。右翼思想で安倍総理に取り入ったが、中身はなくて人寄せパンダとして使われていると冷ややかに見ている官僚が大半だった。

 都知事選では、自民党の東京都議会のドンを「悪の権化」に仕立て上げたが、小池氏自身東京都選出議員であり、自民党東京都連の重要メンバーだった。つまり、都政の腐敗の共犯者だと言われても仕方のない立場だ。

 ところが、そうした事実は何の意味もないらしい。都知事選で「東京大改革」と叫んだ小池氏を「改革派の旗手」「平成のジャンヌ・ダルク」ともてはやしたのが、真実を報道するはずのマスコミだった。特にテレビの情報番組では、小池氏を取り上げることで視聴率が上がるという商業的観点から、大々的に小池氏を応援する放送を続けた。改革の実績がないことなど誰も問題にしなかった。小池人気は、明らかにマスコミが作り上げた虚構のブームだったのだ。その結果、小池氏は地滑り的大勝利を収めた。

 都知事就任後の小池氏の実績を見ると、こちらもほとんど見るべきものがない。石原慎太郎元知事を悪役に仕立て上げて、豊洲の土地売買問題などをほんの少し明らかにしたが、その後の入札改革などは尻すぼみだった。オリンピックや築地移転問題でも成果はない。

 実は、東京都最大の問題は、天下りである。国家公務員の天下りよりもはるかに深刻で常軌を逸した官僚利権がはびこっている。東京都の幹部職員が最も恐れたのは、「天下り問題に手を付けられたら大変だ」ということだった。

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