衆議院議員選挙に突入したまさに同時期、未就学児を抱える親たちが「保活」という闘いに突入しようとしている。多くの自治体で認可保育園の入園案内が配布され、一次募集の申し込みが始まる“保活シーズン”が今年も本番を迎えているのだ。預けたい人が安心して預けられる保育を実現してほしい――。そんな切実な思いを持った親たちにとって、今回の選挙は投票先に迷う選挙になっていると言えるだろう。
【写真】「保育園落ちた日本死ね」で流行語大賞の受賞挨拶をした山尾志桜里氏
ある母親の匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」を国会に持ち込み、待機児童問題に改めて注目を集めた山尾志桜里氏が、不倫疑惑でつまずいた直後の衆院解散。子育て世代は旗印を失ったまま、自民党が目玉施策として子育て支援、「幼児教育の無償化」を打ち出した。
子育て支援策に限って見ると、自民党の選挙公約に記されているのは<2020年度までに、3歳から5歳までのすべての子供たちの幼稚園・保育園の費用を無償化します><0歳から2歳児についても、所得の低い世帯に対して無償化します>という内容。党首の安倍晋三首相は消費税率を10%へ引き上げ、増えた税収のうち約2兆円を教育無償化などに充てると宣言している。
何となく「子ども思い」に聞こえるこの政策が、実は保育の専門家たちにすこぶる不評。「ちーがーうーだーろーー」という声が聞こえてきそうだ。
日本や海外の保育行政に詳しい日本総合研究所主任研究員の池本美香さんはこう疑問を投げかける。
「保育料は既に応能負担の考え方で世帯所得に応じて減免されていて、生活保護世帯の保育料は無償化されています。マニフェストで無償化の対象とする『低所得者』が何を指すのかわかりませんが、これ以上どう進めるのでしょうか。意図がわかりません」
待機児童問題で親たちが求めてきたのは預け先の確保であり、保育の質を守ることだった。妊娠中から保活を始め、出産と同時に預け先や職場復帰に不安を抱える現状を変えてほしい。仕事の形態によらず預けたい人が預けられる、安全で柔軟な保育を。それが働く親たちの願いだったはずだ。