日本は前半に9本のシュートを放ったが、そのほとんどに絡んでいたのが武藤のポストプレーだった。これは、これまでの日本にはない攻撃パターンであり、シュートこそ決まらなかったものの、大迫や香川の決定力を引き出す新たな“引き出し”になることを予感させるプレーでもあった。武藤自身も「連係に関しては非常に上手くいったと思います」と手応えを感じていたようだ。

 一方、武藤と交代で出場した乾は、後半42分に左クロスから酒井宏の折り返しで倉田の決勝点を演出した。縦へ突破すると見せてカットインしたり、その逆で縦に抜け出したりと、変幻自在のプレーでマーカーを翻弄。長友とも「タメを作ることで佑都くんが上がりやすくなるかなっていうふうに思っていた」と阿吽の呼吸で味方の長所を引き出した。

 武藤の役割が中央突破の変化系だとすれば、乾は原口と同様、これまで日本のストロングポイントであった「左で崩して右で決める」という伝統の継承者と言えるだろう。2人が存在感を発揮したことで、もともと激戦区のFW陣は生き残りをかけてますます競争が激化したことは間違いない。(サッカージャーナリスト・六川亨)