坂口さんはいまや、世界的研究者となったが、子どもの頃から理系だったわけではない。京大で哲学を学んだ父親の影響もあって、10代の頃は文系志向だった。母親の実家は江戸時代から続く医院だったが、医師になるよう言われたことはなかった。少年少女世界文学全集を買い与えられ、読書に熱中した。
■大学合格時、勉強は自分を裏切らないと気づいた
父親が校長を務める県立高校に進学したが、徐々に行くのが面倒になり、授業に出ず自宅で勉強し始めた。受験当時は予備校へ行かず、参考書と問題集で勉強し、通信添削を受けた。1浪したものの、京大医学部に合格できた。このとき、勉強は自分を裏切らないと気づいた。
坂口さんが研究医になってから今年で40年。その成果が、いまようやっと花開こうとしている。学界内で少数派だったこともあったが、悲壮感はなかった。研究者として自分が正しいと思った以上、そのまま突き進むべきだと考えていたからだ。研究人生を振り返って、坂口さんは「何事にも時間がかかる」と話す。
「勉強は自分を納得させるためにするものです。それは学校の勉強でも同じですね。勉強をすれば、次第に興味や関心が定まっていきます。もし将来や目標が決まっていなければ、勉強を頑張ればいい」
受験生に向け、こう言葉を残した。
(文/加藤弥)
※週刊朝日MOOK『医学部に入る 2018』から