脚本家・倉本聰(82)がシルバー世代に向けて手がけた昼ドラ「やすらぎの郷」(テレビ朝日系)。今年4月から放送され多くの視聴者に愛されたドラマだが、まもなく最終回を迎える。9月29日発売の週刊朝日ムック「高齢者ホーム2018」では、倉本聰にとっての理想のホームや、ドラマの秘話などを尋ねた。
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僕だったら高齢者ホームに何を望むか。プライベートの時間が多くなるだろうと思うので、基本的にプライバシーを保てることが望ましい。確実に独立できて、しかも、医療的にも介護的にもガードされているところ。いつ風呂場で倒れてしまうかわからない、といった不安があるわけですから。そういうホームがあれば、いちばん理想だと思います。
ドラマでは立地としては緑が欲しかったんです。カナダにね、バンクーバー西側の海の中にバンクーバーアイランドという島があります。リタイアした人が住むといわれているんですが、悪い言い方をすると、ウェイティングアイランド。「死ぬのを待っている」っていう陰口もあるんですが、とってもきれいな島なんです。シャレた家がいっぱいあって、みんなとってものんびりした暮らしをしている。日本にもそんな場所があってもいい。僕は富良野がそうなればいいと思っているんですが。
実は、「やすらぎの郷」は富良野で発想し、富良野を舞台にしてやろうと思っていたんです。富良野プリンスホテルの旧館でやりかけましたが、現実には役者の大移動がとても予算に合わず、川奈(静岡県)をロケに使いました。
建物では、ラウンジの天井の高さにすごくこだわりました。それと陽光が入ること。入居者は日の出と日の入りに合わせた生活をしていますから、太陽がとても大事になってくるんです。
――舞台となった「やすらぎの郷」は、テレビ界に功績のあった者だけが入れる無償の高齢者ホーム。倉本の理想が凝縮されているという。