トランプ米大統領は国連総会で19日、「ロケットマンは自殺任務に突き進んでいる」と金正恩朝鮮労働党委員長を批判し、「自分や同盟諸国を防衛するしかない状況になれば、我々は北朝鮮を完全に破壊するしか、選択の余地はない」と軍事攻撃を辞さない立場を強調した。
これに対して、ドイツのメルケル首相は、「そのような脅しには反対」、「制裁とその実行は正しい解決方法だと思うが、ほかのやり方はすべて間違っている」との考えをトランプ大統領に事前に伝え、それをメディアへのインタビューで明らかにした。
また、フランスのマクロン大統領は総会で「緊張を高めることを拒絶する。対話の道を閉ざすことはしない」「軍事解決を語るなら、多くの犠牲者を覚悟することになる。我々がこの地域でやるべきことは平和の構築だ」などと、外交による解決を強調した。
韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領も、「過度に緊張を激化させたり偶発的な軍事的衝突で平和が破壊されたりしないよう北の核問題をめぐる状況を安定的に管理しなければならない」「私たちは北の崩壊を望まない。吸収統一や人為的な統一も追求しない。北が決断を下すならば国際社会とともに北を助ける準備ができている」と述べ、対話路線を強調するとともに、国連の機関を通じて北朝鮮に食料や医薬品など、日本円でおよそ9億円相当の人道支援を行うことを決定した。
北朝鮮の隣国である韓国はもちろん、遠く離れた独仏首脳が軍事的解決を否定しているのに対し、全く正反対の姿勢を示したのが安倍晋三総理だ。20日の国連総会で、「対話による問題解決の試みは無に帰した」と対話路線を否定。「全ての選択肢はテーブルの上にあるとする米国の立場を一貫して支持する」と述べ、軍事力行使のオプションを認める立場をあらためて表明した。
●倒錯した安倍政権の安全保障論理
日本だけが、何故米国と歩調を合わせて戦争を肯定する路線を突き進んでいるのだろうか。
私たちはもともと、日米安全保障条約の意義として、「アメリカに日本を守ってもらう代わりに、日本は基地を提供する約束だ」と教えられてきた。それが今や「日米同盟(日米安保条約)を守らなければ日本を守れない(米軍抑止力至上主義)」――だから「日米同盟を守ることは何よりも大事だ」――だから、「米国が北朝鮮と戦争する時、日本が攻撃されていなくても、米国に求められたら日本も参加するのは当然だ」という具合に、見事に話がすり替っている。
こうしたことを指摘すると、「日米同盟は日本にとっての生命線だ。これがなくなったら、中国が尖閣諸島を領有しようと必ず攻めてくる」と言う人がいる。私なら「そんな事態は起きない」と答える。しかし、彼らは間違いなく「もし攻めてきたら責任をとれるのか!」と攻撃してくるだろう。ネットで発言すれば、誹謗中傷され炎上する可能性も高い。
しかし、日本が攻撃されてもいないのにアメリカと共に戦争に参加するべきだという愚かな考えを認めてはならない。「日本の守護神アメリカを助けるためなら、日本人が死んでも良い」という考え方には、断固として反対するべきだ。「国民を守るための日米安保条約のために多くの日本人が死ぬ」というのは倒錯した論理としか言いようがない。