この漢字、読めますか?
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 話し言葉に方言があるように、漢字にも特定の地域でしか通用しない「方言漢字」があり、土地の文化や歴史を伝えています。漢字が日本に本格的に伝播した5~6世紀ですが、8世紀には方言漢字が各地の風土記や戸籍に出現します。そんな地方独特の漢字〈西日本編〉を「みんなの漢字」9月号からお届けします。みなさん、読めますか?

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【Q1】 杁

【Q2】 妛

【Q3】 椥

【Q4】 鼕

【Q5】 汢

【Q6】 咾

【Q1 正解】  杁(いり)
正解したあなたは、愛知県出身?

<解説>江戸時代初期に尾張藩でつくられた漢字。地元の方言では用水路の取水口を「いり」「いる」といい、愛知県内では杁中や杁ケ池、二ツ杁などの地名や駅名が見られる。

【Q2 正解】 妛(あけび)
正解したあなたは、滋賀県出身?

<解説>滋賀県多賀町に妛原(あけんばら)という集落がある。山冠に女と書くのが正式な漢字だが、パソコ入力に用いるJIS 漢字に登録する際、見誤って「山」と「女」の間に横棒が加えられたとされる。

【Q3 正解】 椥(なぎ)
正解したあなたは、京都府出身?

<解説>室町時代に京都で生まれた漢字で、京都市山科区に椥辻という地名が見られる。道を「知」らせるための「木」とされるが、ナギの木を表す「梛」の字から変化したと考えられる。

【Q4 正解】 鼕(どう)
正解したあなたは、島根県出身?

<解説>出雲地方では昔から大太鼓を「どう」と呼ぶ。10 月の第3日曜日に開催される「松江祭鼕行列」では、鼕をのせた山車が松江市内の中心部を勇壮に練り歩く。

【Q5 正解】 汢(ぬた)
正解したあなたは、高知県出身?

<解説>低湿地を指す方言「ヌタ」に対する造字で、山梨では「垈(ぬた)」があるが、高知では「汢」の字が当てられた。高知県四万十町に汢ノ川という地名がある。

【Q6 正解】 咾(おとな)
正解したあなたは、佐賀県出身?

<解説>「咾」の読みは、辞書では「ロウ」「こえ」だが、佐賀県では「おとな」。代官役の上役を指す当地の用語で、戦国時代から使われていたとされる。佐賀市内に咾分という地名がある。

監修/笹原宏之(ささはら・ひろゆき)。早稲田大学社会科学総合学術院教授。文学博士。
主要出典/笹原宏之『方言漢字』(角川選書)

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