仏教的には、刑務所の中だろうが外だろうが、同じシャバだ(※写真はイメージ)
仏教的には、刑務所の中だろうが外だろうが、同じシャバだ(※写真はイメージ)
島田裕巳氏
島田裕巳氏

 日本人は、「無宗教」「宗教アレルギー」などと言われるわりに、アニメやゲーム、映画などに神秘的な宗教用語を取り入れるのは大好きである。神、悪魔、堕天使、輪廻、煉獄、サバトといった言葉のオンパレードだ。

 ただし、当然ながら、それとそうした用語が作品の中で正しく扱われているのかは別の話。

 そこで今回は、島田裕巳氏が『無宗教でも知っておきたい宗教のことば』(朝日新聞出版)で指摘している、ゲーム・アニメ・映画で扱われがちな勘違い宗教用語について見ていこう。

(1)「シャバ」は刑務所の外ではない

 よくヤクザ映画などで、刑務所に入っている登場人物が面会に来た人間に「シャバの様子はどうだ?」と尋ねたり、出所して「シャバの空気はうまいぜ」などと言うシーンがあるが、この「シャバ」はもともと、仏教用語だ。

 シャバは「娑婆」と書き、我々の住むこの世界を指す。娑婆は、汚れた世界という意味で「穢土(えど)」ともいい、仏教修行を通じて脱出すべき世界だとされる(ちなみに、その脱出先が清らかで美しい「浄土」、つまり極楽)。

 つまり、仏教的に言えば、刑務所の外はもちろん中だってシャバだ。中から外へ出たとしても、浄土にくらべれば空気も汚れていてマズイはずなのだ。

(2)「サタン」は悪魔の総大将ではない

 サタンという名前は、古くは『デビルマン』や『女神転生』シリーズ、最近では『青の祓魔師』、さらにはスマホゲーム『パズドラ』などに、悪魔の総大将として出てくる。しかし、もともとのサタンはそのようなものではないという。

『旧約聖書』の「ヨブ記」に描かれるサタンは「神の僕」の一人であり、神のために地上を巡回し、人間に苦難を与えることで信仰を試す存在。

だからこそ、『旧約聖書』がはじめてギリシャ語に翻訳されたときに、「サタン」という言葉には「告発者」を意味する「ディアボロス」があてられ、それが英語の「デビル」の語源ともなったのだ。

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