甲子園初采配で初勝利をつかんだ天理の中村良二監督(撮影/写真部・松永卓也)
甲子園初采配で初勝利をつかんだ天理の中村良二監督(撮影/写真部・松永卓也)
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 8月13日午前6時45分。

 「新米」と表現する天理の中村良二監督は緊張感に包まれていた。この日の第1試合。甲子園初采配となる初戦を直前に控えた三塁側の室内練習場でのことだ。

「選手時代はぜんぜん緊張しなかったですね。大観衆に素晴らしい球場、そしてテレビ放映までされて『すごい幸せな気持ちで野球ができるな』と思っていました。でも、監督というのは、良いことも悪いこともいっぱい考えて采配するでしょ。後手に回ることも考えながら采配していくので、ポジティブな考えだけではいられない。ネガティブなことも考えるんです」

 実績は十分だ。天理の主将として全国制覇を果たしたのは1986年、3年夏の甲子園だった。同年秋のドラフト会議で近鉄から2位指名を受けてプロ入り。97年まで現役を続けた。その後、中学生のシニアチームの監督を9年間務めた時期もありながら、2008年に天理大の監督に就任。14年に母校・天理のユニフォームに再び袖を通し、コーチを経て15年8月から監督を務めている。だが、そんな中村でさえも、監督として初めて挑む甲子園は別格なのだ。そこには、「感謝」という言葉に覆われた、中村の特別な思いがある。

「自分がまさかね、母校の監督のユニフォームを着て、30数年が経って甲子園球場に監督として戻れるなんて思ってもいませんでした。でも、いろんな方のご尽力もありながら、3年生を中心としたチームが甲子園に連れてきてくれた。本当に感謝しかないですね。だからこそ、選手には『一歩も引かずに強気で行くぞ』と言ってゲームに入りたいと思うんですよ」

 対する大垣日大を率いるのは、甲子園を熟知した阪口慶三監督。愛知の東邦で38年間指揮を執り、05年から大垣日大の監督。東邦時代は「鬼の阪口」と言われ、両校で春夏通算31回目の甲子園出場となる名将である。中村は試合前に言った。

「ベテラン監督の阪口先生なので、新米の僕がどこまで采配できるか、という思いです。僕の甲子園での初采配。何か感じるものがありますね」

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