■寝たままかんでも脳は活性化しない

 食べるときの姿勢も意識してほしいと、志賀歯科医師は言います。

「ベッドに寝たまま上半身だけ起こして食事をしたときには、座って食べるときほど脳の血流は増えません。介護用ベッドを使っていたとしても、可能な限りいすなどに腰かけ、テーブルに向かって食べるようにしたいものです」

 なにを食べたらいいのかも気になるところですが、「特別に意識しなくていい」と志賀歯科医師。

「本来、咀嚼は無意識におこなうもの。かむことに意識が向きすぎないほうが自然な食べ方を維持できます」

■認知症になっても「自分で食べる」を大切に

 もしも認知症やその予備軍(軽度認知障害)であるという診断を受けた場合でも、「よくかむ」「自分で食べる」という行為は非常に大切です。高齢者の歯科医療に詳しい九州大学大学院教授の柏﨑晴彦歯科医師はこう話します。

「かむことによる脳の刺激や血流の増加は、認知症の進行を遅らせる効果も期待できます。手や指のこまかな動きも脳を活性化させますから、自分で箸やスプーンを使って食事をし、食後歯みがきするということで、できるだけ長く、普通の生活を維持することが可能になるのではないでしょうか」

 しっかりかんで食べるという意味でも義歯の装着は大切ですが、広島大学の調査では、適合した義歯をつけることで認知症の患者の転倒回数が減ることもわかりました。前出の志賀歯科医師はこう説明します。

「歯を失い、かみ合わせが悪くなることで全身のバランス感覚も崩れるのです。単に義歯が入っているだけではなく、正しいかみ合わせの義歯をつけることで転倒などによる骨折を防ぎやすくなります」

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