■口から食べることは健康長寿の必須条件
「口から食べることは、誤嚥性(ごえんせい)肺炎による死亡を防ぐ意味でも非常に重要です。かむ、のみ込むという機能を維持することで、誤嚥が起こりにくくなるからです」
と、柏﨑歯科医師は言います。また、認知症が進んで胃ろうや点滴で栄養を補給するようになると、新たな問題が起こるのだそうです。
「口から食事をしなければ口の中は汚れないと思いがちですが、実は逆です。口からまったく食べられなくなると口腔内の細菌叢(そう)が変化し、肺炎の原因菌が増えてしまうことが最近の研究でわかってきました。多少でも口から食べられるほうが、口の中の菌は正常な状態を維持できるのです」
前出の落合特任教授も「口から食べることは、寿命を支えるうえでもっとも基本的なこと」だと言います。落合特任教授は腸管の変化に着目してこう説明します。
「点滴で栄養を補給するようになると、腸での消化吸収が不要になります。腸には全身の7~8割にあたる免疫細胞が集まっているのですが、使われなくなった腸管壁は薄くなるため、免疫細胞は著しく減少します。口から物を食べるということは、全身の免疫機能を守ることでもあるということを忘れないでください」
(取材・文/神 素子)