――心配症の患者さんも多いと思います。

日野原: 健康を感じるには、運動がいちばんです。私たちは運動をしている間はストレスなんか感じない。烏は飛ぶのをやめると落ちてしまう。だから鳥にとって飛ぶことはストレスではない。人間の場合は、歩くことですよ。歩いていれば病気の心配なんかしない。まずは歩きなさい、と勧めます。それからストレスにはいいストレスと悪いストレスがあって、悪いストレスは胃潰瘍になったりするけれど、いいストレスは病気にはならない。寒稽古や寒中水泳をしても風邪は引きません。積極的に生きでさえいれば、人間は健康を保つことができる。そういうふうにできあがっているんですよ。「ポジティブに生きることこそ、健康への近道」ということを分かってほしい。

――聖路加国際病院のボランティア活動についてお尋ねします。現状は?

日野原: 現在、合計350人ほどのボランティアが病院内の誘導や入院の世話、食事を始めとした日常生活の支援、健康指導など、多岐にわたって献身的な活動をされています(2007年当時)。

――始めた当初、反発はありませんでしたか。

日野原: 最初は「素人に何ができるか」という声がありました。でも、患者にとっては、医師よりもボランティアのほうが、いろんなことを聞きやすい。ボランティアから「玄関で待っていますから、どんな服装で来られるか、教えてください」と言われると、患者は「それじゃあ、病院へ行こうか」という気持ちになる。

 医者でなければ医学はできないと一般には思われているけれども、これはちょっとおかしいと僕は思う。音大を卒業しなくても作曲家になる人はいるし、文学部を出なくても作家になる人はいる。どんな分野だって、その分野の専門教育を受けなくても、創造的な仕事をしている人がいっぱいいる。ところが、医療については、専門の学校を出た医療従事者しかできないと思われている。そんなことはない。医療には、専門教育を受けていなくてもできることがいっぱいあります。

次のページ