病院で測っても、血圧は正常値。だからといって安心はできない。職場で働いているときや寝ている間に血圧が高くなる「仮面高血圧」の可能性があるからだ。週刊朝日MOOK「おいしい暮らしの相談室 糖尿病&高血圧」では取材記者が実際に24時間、血圧を測定。仮面高血圧の隠れたリスクがわかった。
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血圧は一日のさまざまな状況下で変動する。血圧が上がるのは主に起床時、興奮時、緊張時、ストレスがたまっているとき、激務時など。一方、血圧が下がるのは就寝時、リラックス時、入浴時、飲酒時など。
「病院で測る血圧だけでは、実は判断できません。普段は正常値なのに、病院では緊張して血圧が上がる『白衣高血圧』や、逆に、病院では正常値なのに、勤務中や夜間など特定の時間に血圧が高い『仮面高血圧』などがあるからです。病院で正常値と言われているので、血圧が高い時間があることに気づきにくいのです。そのまま放置すると、心筋梗塞や脳卒中などの命にかかわる血管病を発症する危険性が高まります」
東京都健康長寿医療センター顧問の桑島巌医師は、そう指摘する。桑島医師によると、白衣高血圧と仮面高血圧はそれぞれ900万人前後いるとされている。ただ、白衣高血圧は検査時だけ上昇してしまうので、普段は正常に近い。
問題は仮面高血圧で、ポイントは「職場」と「夜間」だ。
「普段は正常値なのに、職場での血圧が高くなるのが職場高血圧。特に、上司と部下の板挟みになる中間管理職は血圧が高い傾向がみられます。以前、東京都の職員300人を対象に、仕事の合間に血圧を測ってもらったところ、病院では正常値だった職員の約23%が140を超える高血圧でした。仕事の合間の数値ですから、勤務中はもっと高いと推測されます。民間企業でも同じ調査をしたところ、33%が職場高血圧でした」
病院では正常血圧(130~139/85~89mmHg)なので健診でわからず、職場高血圧が何年も見逃されてしまう。すると、数年後には持続性の高血圧になりかねないのだ。
もう一つの仮面高血圧である「夜間高血圧」は、どのようなものか。