こうした共通言語が多ければ多いほど自然と会話が増えますが、ふたりの関係に温度差があると、「感情のやり取り」が減り、会話そのものが成り立ちにくくなります。こうして会話が減ってしまった夫婦は、(1)仮面夫婦でも続けるのか(2)違う道=離婚を選択するのか、という岐路に立つわけです。これは何も大げさなことではありません。

 そんな状態の夫婦に、出産・育児・転勤・転職・親の介護など家族にまつわるイベントが発生すると、亀裂が入るきっかけがさらに増えます。この亀裂は、「家にいるより外の方が気が楽」という思いに繋がり、人によっては仕事、異性、趣味など家庭以外のことに時間を費やすようになってしまうのです。当然ですが、さらに夫婦で関係性を築く時間は減ってしまうので、「そもそも一緒にいる必要があるのだろうか」と考えるようになってしまいます。

 もう一つのキーワードは「期待」です。温度差は、相手に対する期待の表れでもあります。期待すること自体が悪いわけではありませんが、たいてい期待は相手に対する思い込みから始まります。「きっとわかってくれているはず」「あの人ならこうしてくれるはず」という自分勝手な先入観です。

 ふたりの温度差が同時に低い状態なら、お互い相手に期待しません。さらにその関係にある程度のギブ・アンド・テイクが存在すれば、仮面夫婦でも夫婦を続ける選択ができるかもしれません。問題は、どちらかの温度が高く、どちらかが低いときで、その温度差は低い方の不満となります。そこにギブ・アンド・テイクが存在しなければ、(2)違う道=離婚を選択する可能性が高くなるのです。

 これを解決する手段はたった一つ。面倒くさがらずに、毎日の小さなコミュニケーションを大切にし、常日頃からふたりの間の温度差を気にかけておくこと。そして、結婚生活では過度に相手に期待をしないこと。これに尽きます。

 大きな問題を話し合うためには必ず、小さな会話を毎日続けてお互いが分かり合う関係を作り続けることが大事です。離婚のすべてが悪いわけではありませんが、憎み合うような離婚をしてしまう夫婦は、必ずと言っていいほど、お互いがニュートラルに気持ちを交わすコミュニケーションが圧倒的に不足しているのです。