都大会決勝で2本塁打の早稲田実(東京)の清宮幸太郎(c)朝日新聞社
都大会決勝で2本塁打の早稲田実(東京)の清宮幸太郎(c)朝日新聞社

 清宮幸太郎と野村大樹の2本のホームランなどで35年ぶりに春の東京都大会を制した早稲田実業。次の公式戦は5月20日から茨城県で開かれる関東大会となる。都大会の決勝では異例のナイターで行われたが、関東大会でも清宮フィーバーに備えて球場の割り振りを変更し駐車場の開門時間を早めるなどの措置がとられ、注目度の高さは相変わらずだ。

 早稲田実が春の関東大会に出場するのは2004年以来13年ぶり。1977年以来40年遠ざかっている優勝の期待もかかるが、出場校は各県を勝ち抜いてきた強豪校揃いということもあってその道のりは非常に険しいものである。

 最初の難関が初戦で対戦する花咲徳栄(埼玉)だ。昨年は高橋昂也(現広島)を擁して春夏連続で甲子園に出場しているが、今年のチームは県大会5試合で50得点を叩き出した攻撃力が持ち味である。その中心が昨年から中軸を務める3番の西川愛也(3年)と2年生ながら4番に座る野村佑希の2人だ。

 西川はシャープな振り出しから広角に鋭い打球を放つ左の強打者。芯でとらえる技術が高く、昨年夏の甲子園でも3試合で10打数6安打と見事な成績を残している。そしてこの春一気にブレイクしたのが野村だ。県大会では5試合で3本塁打、14打点の大活躍を見せ、一部のスカウトからは「清宮の次は(花咲徳栄)の野村だ」と言われるほどの高評価を得ている。

 野村のバッティングの特長は185cmと大柄でありながら力任せではなく、技術で打球を飛ばすことができるというところだ。外に逃げる速い変化球の対応には課題が残るものの、甘く入ると常に長打が出そうな雰囲気が漂っている。2年生で野村といえば、早稲田実の野村大樹が早くから結果を残しているが、こちらの野村も一気に追いついてきたという印象だ。投手陣に不安の残る早稲田実にとっては西川、野村の強力クリーンアップの前に走者をためないことが重要になるだろう。

 早稲田実と同じゾーンにはセンバツに出場した作新学院(栃木)と健大高崎(群馬)も控えており、勝ち進むとそれぞれ二回戦、準決勝で対戦する可能性がある。作新学院は昨年夏の甲子園で優勝した影響で新チームの立ち上げは最も遅かったが、冬の間に一気にチーム力を上げてきた。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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