財務官僚が、「日本の財政を操り、その力で日本を支配しているのは我々だ」という感覚に並ぶ強烈な使命感と優越感。


 しかし、そんなことのために、これまで日本がどれだけの失敗をしてきたのか。それを真摯に反省してみた方がいいのではないだろうか。

●原発を裏から救済するための東芝メモリへの政府出資

 政府・経産省が東芝メモリに投資したいと考えるもう一つの大きな理由は、東芝の原発部門を救済するということだ。

 東芝本体は、もはやボロボロの落第企業。そんな企業を、原発部門があるという理由だけで救済するのは、さすがに安倍政権でも気が引ける。それが、東芝本体への資金注入をためらう理由である。

 そこで、考えたのが、政府系ファンドや金融機関が、東芝本体ではなく、その子会社である東芝メモリーを高値で買うというシナリオだ。東芝メモリが高く売れれば、東芝本体の実入りが大きくなり、原発部門につぎ込むお金もできるという計算だ。

 ただ、あまり高くなりすぎると政府の力の限界を超える。鴻海の3兆円には勝ち目がない。

 今、政府が、軍事転用可能な技術について投げている牽制球は、海外企業に買収をあきらめさせることと、買収価格を少し下げて日の丸連合が応札できるようにするためだとみることもできる。

 そうなれば、東芝原発部門救済と、そこそこの値段で経産省の子会社を創出するという、経産省にとっての一石二鳥の道筋が見えてくるのだ。

 いずれにしても、ありとあらゆる手を使って経産省が粘るのは確実。今後の展開は最後までもつれることが予想される。(文/古賀茂明

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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