これまでも、半導体業界での日の丸連合は失敗の連続だった。

 その一例がエルピーダメモリである。同社は、1999年にNECと日立のDRAM部門を統合して始まり、2003年に三菱電機のDRAM部門が加わってできた会社だ。もちろん、その背後には、経産省の日の丸DRAM連合構想があった。サムスン、SKハイニックスを追って、世界第3位のシェアを持っていたが、結局、巨大投資の競争に敗れ、政府の支援を求めた。経産省は、日本政策投資銀行の出資で救済したが、最終的には破たん。米企業マイクロン・テクノロジー社に買収されて、その完全子会社になってしまった。

 さらにもう一例を挙げれば、ルネサステクノロジがある。韓国などの追い上げに苦しんだ日本の半導体産業は、2003年に日立と三菱(DRAMはすでにエルピーダに切り出していたので残りのマイコンやシステムLSIなどの部門をさらに切り出した)が半導体部門を統合してルネサステクノロジを発足させ、2010年にはNECも半導体部門を切り離してこれに合流し、ルネサスエレクトロニクスとなった。もちろん、その陰には経産省の日の丸半導体連合構想があった。

 しかし、寄せ集めの弱体化企業の集まりだったため、業績は悪く、結局、2013年に産業革新機構が救済のために、約1400億円を投じて実質、国有化せざるを得なくなった。その後も、同社は芳しい業績を残せず、15年3月にようやく黒字化したものの、従業員の2万人削減など、リストラに勤しんだ結果に過ぎず、成長企業とは決して言えない。

 今回の日の丸連合は、半導体業界での三度目の正直を狙うものだが、前述したとおり、日の丸連合にすれば、かえって、その成功の可能性は低くなることは確実だと言ってよいだろう。

●技術流出、安全保障論を大義名分に挽回狙う経産省

 ここへきて、東芝メモリの売却が日本の安全保障上の脅威になるという論調が急激に高まっている。

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